やっぱり、私は私なんだと理解した。
どうして変われないんだろう。
嫌だ。
嫌だ変わりたい。
変わりたい、のに、どうして、こう、なるの。
「またか」
「、リズさん・・・」
いつの間にか、しゃがみ込んでた私の隣にリズさんがいた。
言葉は責めるように、呆れるように。
目には心配するように。
ああ、この度に私はとてつもなく申し訳なくなって、リズさんから視線をそらすのだ。
私には発作的に起きる症状がある。
昔から、幼稚園くらいの時には既に発症していた。
それが未だ治らず、こうして成人した今でも時たま起きる。
リズさんは――震えているんだろうな――私の背中を優しく一定のリズムで撫ででくれた。
その優しさと温かさに、涙が溢れてきた。
本当に弱い。
本当に情けない。
どうして私はここにいるのか。
本当に疑問だ。
「落ち着いたか」
「・・・はい。ごめんなさい」
「謝ることはない」
「でも、・・・」
今日はみんなで京の郊外を散策しているはず。
私は景時さんのお邸で留守番。
一緒の世界から来たはずの望美ちゃんとは違い、私は武器を持つなんて出来なかった。
その代わりになるような特別な力も持ち合わせてなかった。
ただのお荷物。
私が留守番なのは言わずもがな。
私のソレは不安になると起きる。
不安感が積もりに積もって崩れる時、発症する。
また質が悪く、発作が起きている時の記憶は一切残らない。
私が知っているのは、発作の起きる前後の記憶と、この惨状。
棚は倒れ、中に入っていた物が部屋一面に転がり、漆細工や螺鈿細工も壊れたりしている。
中には庭にまで転がり出ていった物もある。
強盗が入った後みたい。
自分がしたことなのに他人事のように思う自分に苦笑いした。
私は暴れる、のだ。
癇癪持ちが暴れるように。
自分の周りにある物に当たり散らす。
しかも本人に自覚なし。
本当に手に負えない。
リズさんにはいつからかバレていた。
私が自分のことを説明しても何も言わずに頭を撫でてくれた。
それから私の発作が起きる度にこうして私のとこに来てくれる。
私の発作はみんながいない時に限り起きる。
遠出しているはずのリズさんが来てくれた時の申し訳なさは半端なかった。
今日だってそうだ。京の郊外散策なのに、わざわざ京の中心地まで戻ってきてくれる。
私のために、だ。いや、私のせいで、か。
申し訳ない。けどそれ以上に嬉しい。
私は弱い。
けどリズさんは、そんな弱い私もひっくるめて包んでくれる。
望美ちゃんや九郎には厳しいのに、私には甘い。
それは私が二人みたいに強くないと知っているから。
ぬるま湯。
リズさんはきっと私がいつか自分で立ち上がれると信じてくれているんだろう。
ずっと浸かっていたいぬるま湯。
気持ちがよくて、ついつい時間を忘れてしまう。
でもずっと浸かっていると風邪をひいてしまう。
そうなる前にあがらなくちゃ。
でもきっと、私はあがれない。
誰かが声をかけてくれないと。
誰かが私の手を引っ張ってくれないと。
リズさんはその誰かじゃない。
だってリズさんは私が一人であがれると信じている人だから。
誰か。
誰でもいいんだ。
苦しいんだ。
真っ暗なんだ。
息が出来ないんだ。
こんな自分、大嫌いなんだ。
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