黒執事Ⅰの1話。
メイド長設定の主人公。
名前:ルメリア固定。
悪魔はセバスいるし、どうしよう。
天使っていうのも安直だしなぁ・・・
思案中。
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あぁ、お客様が走っておられる。
参りました、廊下を走るとは、一体どのような教育をお受けになったのか。
イタリアの方ですから、仕方のないことでしょうか?
「ルメリア」
頭に坊ちゃまの声が響いてくる。
若い幼い、独特の低い声。
私を捕らえた、その声。
「はい、如何なさいました、坊ちゃま」
「あの薄汚いやつに、最高のもてなしをしてやれ」
「Yes,my Eminence.」
屋敷を逃げ回っていらっしゃるとか。
なるほど、だから走っていらっしゃったのですね。
ということは、既にセバスチャンがおもてなしをしているようですね。
ならば私は口添え程度で大丈夫でしょう。
今はどの辺りに・・・・・あぁ!何と言うことを!!!
オーブンの中に入るなんて・・・!
私が坊ちゃまのために作ったお菓子を!
←※→←※→
「せっかちなお方だ。デザートが待ちきれずオーブンに入られるとは」
「お、オーブン、だと・・・!?」
小窓が開いたと思うと、そこからあの執事が顔を覗かせた。
とてもおぞましいことを言いながら。
そう言うと火がついたのだろうか。
回りが少し熱く、明るくなった。
「だっ出してくれっ!!!」
「ご存知でしたか?英国には、肉の油で焼く焼き菓子もあるんですよ」
「頼むっ!!!開けてくれ!!!」
自分の必死な声と、オーブンのドアを叩く音。
そんな空間に鈴がひとつ転がった。
「申し訳ありません、お客様」
ルメリアの声!
私は歓喜に震えた!
彼女なら、彼女なら、この悪魔から救い出してくれる!
「ルメリア!助けてくれ!ここを開けてくれ!」
彼女へのある一種の漠然とした信頼感。
それは私自身が彼女に特別な思いを抱いていたからに過ぎない。
彼女の人間離れした美しさは、初めて会った時から私の心を離さなかった。
そんな彼女はいくら今よりも好条件を提示しても首を縦には振らなかった。
シエル・ファントムファイブが、自分の唯一の主である、と。
その言葉が私には解せなかった。
だからこそ、シエル・ファントムファイブを嫌った。
彼女は私の言葉にまたもう一度、申し訳ありません、と言葉をはさみ、続けた。
「途中でオーブンを開けてしまうと、熱が逃げてしまい、美味しく焼き上がらないのです。何卒、ご容赦願います」
「だ、そうですよ」
小窓から見えるルメリアの顔は口許しか見えない。
小窓が閉まっていく。
それを呆然と見つめていた。
いや、小窓を見ていたのではなく、ルメリアを、ルメリアの口許を見ていた。
完全に閉まってしまう直前、私はオーブンの中にいながら鳥肌が立った。
ルメリアが口が裂けんばかりに笑みを浮かべていたからだ。
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